COMPANY PROFILE
本 社:神奈川県川崎市
設 立:2006年
資本金:6億2900万円
売上高:367億円(2019年度)
従業員数:294名(有期社員を含む)
事業内容:事業内容:パートナー企業向けのハードウェア/ソフトウェア/サービスの販売、ITサプライ用品の販売、3Dプリンター事業、リサイクルバッテリー・サービス事業、サプリメントの販売事業などを展開
https://www.i-guazu.co.jp/
IBM製品のVAD(付加価値ディスとリビューション)事業では全国に400社以上のパートナーを擁する。2017年にJBCCグループから独立し、事業の多角化を強力に推し進める。2020年4月にIBM i資産の見える化サービス「イグアス見える化サービス」の提供を開始した。
全社業務改革の一環で
紙業務の削減を推進
イグアスは、日本IBMの付加価値ディストリビュータ(VAD)のなかで最大規模のベンダーで、そのほかITサプライ用品の販売事業や3Dプリンター事業、リサイクル・バッテリー・サービス事業(MOTTA)、サプリメント販売のモリンガ事業などを幅広く展開中である。
同社は2017年にグループ会社から独立したが、その際に基幹システムを一から構築し直し、あわせて業務改革に着手し、以来継続的に進めてきた。
「業務改革のポイントは、紙の業務を減らしてデジタル化による自動化を進めることと、業務の属人性を緩和して各部門のメンバーがより効率的に働けるようにすることでした。私の部署では、お客様からFAXで送られてくる受注書の処理と請求書の発行が紙中心の業務で手作業の工程も多く、またベテランと新人との業務効率に大きな差があったので、まずはその部分のシステム化に取り組むことにしました」と語るのは、サプライ用品の業務処理を統括する管理統括本部 業務管理本部の箕田容子 第一業務部部長である。
紙の受注書を読み取るOCR製品については、2年ほど前から展示会やセミナーへ出向いて調査と検討を進めてきた。最終的に絞り込んだのは3社の製品。それぞれのデモンストレーションも実機で見せてもらい、その結果、選定したのはハンモックの「AnyForm OCR」である。今年1月のことという。
箕田氏は、「費用面ではAnyForm OCRよりも低価格の製品がありましたが、機能の豊富さと専業メーカーならではのきめの細かい作り込みがあり、それを評価してAnyForm OCRに決めました。当社はお客様が作成した注文書で受注しているので、OCR側でお客様個々のフォームに合わせた帳票設計が必要になります。AnyForm OCRはドラッグ&ドロップの要領で設計できるので非常に簡単で、さくさくと作業が行えます。それが非常に魅力的に映りました」と、選定の理由を述べる。
同社にFAX経由で注文書を送ってくる顧客数は約500社。顧客ごとの帳票設計は今年4月から開始し、8月末までに約半数の設計を終えた。
新型コロナの影響で
RPA連携を前倒しでスタート
AnyForm OCRによる帳票設計がスタートしてから少し遅れて、RPAツールとの連携によるさらなる効率化の取り組みが始まった。
「RPAツールとの連携は、OCRツールの検討当初から構想し、OCRツールによる帳票設計が一段落した時点で取り組む予定でした。ところが新型コロナの影響で当社も在宅勤務への切り替えとなり、3密を避ける勤務体制が必要になったために計画を前倒しし、帳票設計を進めている最中の7月からRPA連携によるシステム化の作業を開始しました」(箕田氏)
RPAツールは、当初から三和コムテックの「AutoMate」に決めていた。
プロジェクトでSEを務めた製品&ソリューション事業部 ソリューション本部の保江佳信氏(テクニカル推進部)は、「AutoMateは、RPAツールで一般的な画面の座標指定やキーボード打鍵による操作識別のほかに、HTMLの解析やアプリケーションのオブジェクト分析でも操作を識別できるので、ロボットの組み立てが非常に容易です。さらに、自動起動のためのトリガー機能や基幹システムとの連携機能も充実しているので、当社で使うのならAutoMateが最適と従来から考えていました」と、採用の理由を語る。
7月初めから安江氏がFAX注文書処理業務のヒアリングを開始。要件を定義した後、7月半ばからロボット開発に着手し、8月半ばに完成。9月初めからシステムの利用を開始した。
AutoMateとの連携後は
手作業が激減、処理もスピードアップ
ここからは、AnyForm OCRとAutoMateをどのように適用したのかを見ていきたい。従来の手作業中心で行っていたFAX注文処理業務は、次のような流れである。
①複合機が顧客からの注文書を着信すると、すべてを自動印刷。
②印刷された注文書を担当者が見て、判読の難易度で3つに振り分ける。
③難易度の高い注文書はベテラン部員へ、難易度の低い注文書は新人部員へ渡し、それぞれが基幹システムへ入力。入力後、FAX注文書へ「入力完了」のハンコ(1つ目の完了ハンコ)。
④基幹システムに登録したものをプリントアウト。
⑤①で印刷した注文書と④のプリントアウトを、最低2名の部員で照合し合い確認(ダブルチェック)。整合していればFAX注文書へ「確認完了」のハンコ。不整合があれば、基幹システムのデータを修正し、修正後、FAX注文書に「確認完了」のハンコ(2つ目のハンコ)。
次は、AutoMateとAnyForm OCRによるシステム化後の流れである。
❶複合機が顧客からの注文書を着信すると、すべてを自動印刷。同時に共有フォルダへPDF保存(複合機の機能)。
❷共有フォルダにPDFファイルが入ると、AutoMateが感知し、AnyForm OCR受信フォルダへ自動転送。
❸AnyForm OCR受信フォルダにPDFファイルが入ると、帳票レイアウトと文字情報によってOCR変換対応注文書か未対応注文書かに自動的に振り分けられる。
❹自動振分されたOCR変換対応注文書は、文字認識されてデータ化。それを担当者が目視で内容を確認し、担当者が「確定」ボタンをクリックするとCSVへ変換され、フォルダへ保存される。(OCR変換未対応の注文書は、その後手動でシステム入力へ)。
❺❹のフォルダにCSVが入ると、AutoMateが基幹システムの「注文書管理システム」を起動して、CSVデータを自動登録。
❻OCR処理した分は、注文書に「完了」のハンコ(ハンコは1つのみ)。
従来の業務フローでは②③④⑤で人手が必要だったが、システム化後はVerifier画面での目視とクリック(❹)と、最後の「完了のハンコ」だけになった(❻)。
初期の目標をすでに達成
次は買掛データの突合処理を自動化へ
顧客ごとの注文書の設計作業は、現在も進行中である。現状は半分を終えた段階だが、箕田氏は「すでに初期の目標をクリアしています」と、次のように話す。
「500社あるFAX経由の注文書のなかには、年に1回のものやOCRでは判読不可能な手書きのものもあります。それらを含めると、500社の約半数の注文書をシステムで自動処理できればよいと考えていたので、すでに目標を達成しています。基幹システムに登録したデータの確認も、従来は2名以上で行っていたのを、現在はOCRを1人目と見なして、スタッフ1人でこなせています。従来5名で担当していた業務を、4名で回せるようになりました」
箕田氏は、「AnyForm OCRとAutoMateによるシステム化は、在宅勤務を継続していくにあたって効力を発揮します」と語る。
「4月の緊急事態宣言以降、当社では全社員が在宅勤務となりました。部員は自宅からリモートデスクトップで会社のPCにアクセスし、FAX受信した注文書(PDF)の受注処理を行ってきましたが、システム導入以降は人手をかける部分が大幅に減ったので業務効率がさらにアップしています。今後は仕入先からの請求書をOCRで読み込み、買掛データとの突合をAutoMmateで行うなどの業務システム化に取り組む予定です」
[i Magazine 2020 Autumn(2020年10月)掲載]